1. 「将来の職業名」から逆算しなくていい理由
進路指導ではよく「将来就きたい仕事から逆算して学部を選ぼう」と言われます。もちろん、医師や看護師、小学校教員のように特定の国家資格が必須となる進路を目指すなら、その選び方は有効です。
しかし、世の中にある仕事の大半(企画、営業、広報、マーケティング、IT開発、公務員など)は、特定の学部を出ていなければ就けないわけではありません。それにもかかわらず職業名から選ぼうとすると、次のような落とし穴にはまります。
● 高校生が知っている「職業名」は世の中のごく一部
弁護士、医者、警察官、プログラマー、デザイナー……私たちがパッと思い浮かべられる職業は、世の中に数万とある仕事の1%にも満ちません。まだ知らない仕事のほうが多いのに、知っている数個のラベルの中から無理に「将来の夢」を選ぶのは無理があります。
● 10年後には新しい仕事が次々と生まれる
生成AIの登場や社会構造の変化によって、いま人気の仕事が形を変えたり、新しい職種が生まれたりしています。固定された職業名を目指すより、「変化に対応できる思考力や探求の習慣」を身につけるほうが長期的に役立ちます。
大学選びで本当に必要なのは、「何になるか(名詞)」ではなく、「大学の4年間でどんなテーマについて考えてみたいか(動詞)」を見つけることです。
2. 日常の「なぜ?」から学問候補を作る4ステップ
やりたいことが見つからないときは、机の上で「自分探しの自己分析」をするのではなく、最近の生活の中で「自分からスマホで検索したこと」や「つい時間を忘れて見てしまった動画」を一つ思い出してみましょう。
- 最近、自分から調べたこと・気になったニュースを1つ挙げる(テスト勉強以外で)
- 「なぜ自分はそれに目が留まったのか?」を一言メモする
- その疑問を扱っていそうな学問のキーワードを3つ探す
- その学問を教えている学部のシラバスを覗いてみる
3. 【記入例】身近なできごとから学問へつなぐ4つのケース
特別な経験である必要はありません。高校生の身近な日常から、どのような学問の候補が生まれるのか、4つの記入例を作成しました。
「『期間限定』と書かれたお菓子を、つい買ってしまうのはなぜ?」
人が無意識に衝動買いしてしまう心理や、お店の棚の配置、パッケージの色彩効果に興味がある。
大学での授業例:「消費者行動論」「価格戦略論」「広告論」
「文化祭のクラスLINEで、指示を出しても誰も返信してくれないのはなぜ?」
集団の中で人がどう動き、どうすればモチベーションを引き出せるのか、人間関係の摩擦を減らすルールに興味がある。
大学での授業例:「組織マネジメント論」「リーダーシップ論」「集団コミュニケーション論」
「なぜオープンワールドのゲームは、何十時間やっても飽きないのか?」
プレイヤーを惹きつける世界観の設計、ストーリーテリング、あるいはグラフィックスを支える物理エンジンの計算に関心がある。
大学での授業例:「ゲームデザイン論」「インタラクションデザイン」「認知心理学」
「地元の路線バスが減便されて、お年寄りが困っているのを見て気になった」
運転手不足や人口減少の中で、地域の移動手段や暮らしやすさをどう維持できるのかに関心がある。
大学での授業例:「地域交通政策」「地域社会学」「福祉計画論」
4. 「それでも日常の材料が見つからない」ときは?
「部活と勉強で毎日が忙しすぎて、そんなことを考える余裕がなかった」という人もいるでしょう。
自分の頭の中だけで考え込んでも材料が出てこないときは、いくつかの選択肢に答える形式で、無意識に惹かれている関心の方向をあぶり出してみるのがおすすめです。
5問の簡単な適性診断で、学問分野のきっかけを探す
希望するエリアや偏差値の目安と合わせて、「生活や文化を豊かにしたいか、技術や科学で役に立ちたいか」といった関わり方の質問(全5問)に答えることで、あなたに合いそうな学部系統の候補と、実際の大学授業動画を提示します。
気になる分野の候補を、5問で探す※登録不要ですぐに診断結果・おすすめ動画を閲覧できます(結果の保存のみ会員限定)。
5. 興味を確かめるための「小さな行動」
候補となる学問がいくつか挙がったら、いきなり志望校を絞り込むのではなく、次のような「小さな行動」を試してみてください。
① 書店の「新書」コーナーをぶらぶら歩いてみる
岩波新書、中公新書、ブルーバックスなどが並ぶ棚は、大学の教授たちが一般向けに学問の最前線を解説した宝庫です。タイトルを見て「おっ、これ面白そうだな」と手に取った1冊があれば、それがまさにあなたの学びたい学問の入り口です。
② クラビジで「大学動画」を1本だけ再生してみる
文字を読むのが疲れているときは、大学の実際の講義動画を10分だけ再生してみてください。高校の授業とは違う、先生の深い問いかけや議論に触れることで、「大学で学ぶってこういうことか」と実感が湧いてきます。
6. まとめ:診断結果の分野と気になった分野を1つずつ調べてみよう
「やりたいことがない」というのは、あなたがまだ世の中の学問や仕事に出会っていないだけのことです。焦って嘘の夢を作る必要はありません。
まずは適性診断で出たおすすめ分野と、自分の日常から気になった分野を一つずつメモし、大学の授業動画を1本見てみてください。「これならもっと知りたいかも」と思えるものが一つ見つかれば、それだけで志望校選びは大きく前進します。